エロゲは(余程のことがない限り)やらないと誓っているわけですが、突然のように片岡ともさんのテキストが読みたくなり購入。エロゲの業界は回転が速いから半年くらい前のゲームでもすぐに廃れてしまうっつー気もするんですが、やはり良い物は良い、かもしれない。っていうかコンシューマに移植されるのを待てなかったってだけなんですけどね。
原画や雰囲気、またタイトルに色が含まれていない(表向き)など、今までのねこねことはちょっと違う実験的な一本という方向性。
実際、サナララでは片岡ともさんはディレクターではなく純粋にシナリオライターとして参加されているようですし、その担当も希未シナリオ、それとじゃじゃ馬のみのご様子。
それ以外は見るべきトコがない‥って言ってしまえばそれまでなんですけど、毛色が変わってもそこはやっぱりねこねこですから、無駄な部分への力の入れようは半端でなく、おまけシナリオの一部分つーか緊急回避は特に楽しめました。
あと、期待してなかったのに結構良さ気だったのが、今回のディレクターにして由梨子さんシナリオの木緒なちさん部分でしょうか。由梨子さんシナリオは序盤ちょっとダレ気味で退屈ですが、起承転結の転に相当する部分からの盛り上がりが良く、またその辺りのテキストも洗練されていたという印象を受けました。ラスト付近、あまりにも予想通りの展開(ベタ過ぎ)がちょっと残念でしたが、サナララとしての締めであるシナリオですから、案外まとまっていたのではないかと。
どーでもいいけど日和先生を出せ。
希未シナリオ
始まりのシナリオにして大本命。
核となるチャンスシステムの説明と読者を引き込ませるという重大な使命を持つシナリオ。でも第一印象は冬ハコネさん。つか、ぽんこつ。
CVが夏野こおりさん=鷹月さくら=田口宏子なので、それに併せてぽんこつと来れば冬ハコネさんな雰囲気なのは仕方がない(?)。しかしネタとしては偽夏さん。ていていっ
ジッソーくんのように顔の前に何かを置いていないと落ち着かない性格であるが、別に物陰で哲学してるわけではなく極度の恥ずかしがり屋という設定。
電波ちっくに登場し、それに意味があることを読者に分からせ、そして必然である別れと"忘れる"という設定内での楽しすぎる日常は、ねこ的というよりもどこか鍵っぽさを思わせる。
評価はA+
テキストそのものはそんなに多くないけれど、その分濃密で洗練された印象を受ける。120円ライクな感じで。
あゆみシナリオ
サナララ中、もっとも活用しがいがあるであろう幼馴染みキャラという設定をうまく生かし切っていない。
毎朝主人公を起こしてくれる典型的なしっかり系幼馴染みではあるものの、世話好きとまでは行かず。主人公に対して暴力暴言の類の行動をしてもツンデレとゆーにも弱い。何とも立ち位置が曖昧なキャラ。
キウイ好きという特殊趣向にしても一発ネタレベルで使われたに過ぎず、執拗なまでにキウイに固執し読者にそれを印象づけるまでは到達していない。
幼馴染みシナリオの醍醐味は、「家族のような近すぎる関係から異性を意識する過程とその心理描写」にあると推測しますが、このシナリオでは突如として甘甘に。
また、幼馴染みの弊害として、「一生に一度のチャンス」を使用後に"忘れる"がイコール離別を示唆するものではないため、緊張感が薄い。
十人並みなソフトハウスならこんなもんだろうで済ましちゃうけど、ねこなのにこれはありえねー。
評価はD-
ねこ故に辛口で。
三重野さんシナリオ
奇跡のないあゆシナリオ。
序盤から匂わせすぎていて、早い段階で三重野さんの素性が予想出来てしまった点は残念。
夜の学校 叶わないお願い そして離別
泣きシナリオの王道というかベタベタ。離別をテーマにして泣きを誘うのは、五年前ならいざ知らず今となっては使い古されすぎて泣けない。
サナララ内ではイレギュラーとも思える、「一生に一度のチャンス」によらない願いの成就、そしてシナリオ期間が一日未満と最短であるものの、そのあたりの地盤は非常に良く活かされている、と思う。
結末は予想の範疇を超えるものではなく、やっぱり、という印象。賛否両論あるかと思うけど私としては有りなんじゃないかなぁと。鬱展開ってわけでもないし。
評価はB
「起こらないから奇跡って言うんですよ」
思わず言ってみたくなる。
由梨子さんシナリオ
ジャージを着てない多恵先輩。
ラストのシナリオにして、今まで語られなかったサナララの意味が明らかにッ!という非常に重責を背負ったシナリオ。
意外にお堅い由梨子さんを非日常の中で引っ張り回すという序盤。少々起伏が乏しくダレますが、始め嫌がっていたのが徐々に楽しくなってくる由梨子さんがなかなか。そして中盤から目的を見つけ主人公と共に自ら行動を起こすようになるあたり、その流れの心理描写は見事かと。
ただ、何故由梨子さんがお試しチャンスであんな事を願ったのか、明確に表現されていないのが意図的なのか手落ちなのか。想像は出来るけど確証はない曖昧な感じ。
評価はA-
出来は良いけど、これだ!っていう突出した部分が無いのが残念かも。
総じて。
一生に一度のチャンスというシステム、期限は1週間、そして"忘れる"ということ。このちょっとした非日常がテーマなわけですが、チャンス云々よりも、その後全てを忘るという設定がこの作品の核でであるわけですね。確実に離別が訪れることを示唆しているので、そこで如何にして再会を果たすか、ここが最重要点。旧ぽんこつさんシナリオを土台にしていると思われます。
ただ旧ぽんこつさんでは主人公の記憶はあるので再会後思い出を繰り返すように付き合っていくのですが、このサナララでは双方の記憶が無くなっているため再会することすら難しいと読者に思わせる事が出来ているのでは、と。
みずいろを超えることは出来ていないと思うけど、それでもねこねこソフトの新しい方向性みたいなのを感じることが出来る良作かと思われます。
それはともかく、ねこねこソフトもエロシーン不要だよね。